無理をしない家づくりに共感
　2013年、子どもを授かったことで、「いつかは」と考えていたマイホームの夢が現実のものとなったFさんご夫妻。新築の依頼先は、知人の住まいを建てた藤井工務店にしたいと前々から考えていたそうです。「できる限り地場の材料や国産製品を取り入れ、環境に負荷のかからないエコな家づくりを目指している点に、共感できました。具体的な話を進める前でしたが、いい家が間違いなくできると確信し、新築をお願いしました」。
　新築のためにご夫妻は120坪の宅地を購入しました。大きな公園に隣接するその土地は、閑静な住宅街の中にあり、子育てには申し分のない環境です。しかし、間口が狭い長方形の敷地は、奥に向かって土地レベルがゆるやかに下がる傾斜地でした。そこで藤井さんは、土地を検分し、その形状に合わせて基礎の高さを調整するプランを提案しました。「基礎で土地の高低差を調整することで、コストを抑えることができます。自然の地形を最大限に生かして、無理のない家づくりをすることが、長く心地よく住まうためには大事です。そのために知恵を絞るのが、私たちの仕事だと思うんです」。

暮らしやすさを支える太陽の光と自然素材
　時間をかけて間取りの打ち合わせを行い、床にはナラ無垢材、構造にはエゾマツやトドマツなどのマツ材、壁には浜頓別の珪藻土と、自然素材を生かした藤井工務店の標準仕様とすることでプランが完成しました。高断熱・高気密の住宅は、夏は長い庇で強い陽射しを遮り、冬は随所に設けた大開口から太陽の光を最大限に採り込む、自然エネルギーを活用したパッシブデザインの住まいになっています。化石燃料の暖房にあまり頼らず、通年で心地よく暮らせる温熱環境を整える、こうした仕掛けも藤井工務店のこだわりの一つです。
　主暖房は「炎が見える暮らしにしたい」というご夫妻の要望を反映し、ペレットストーブを選択しました。「薪ストーブに憧れていたのですが、共働きの私たちにはペレットストーブが手軽に使えると、藤井さんが分かりやすく説明してくれたので、安心して採用できました」。
　さらにLDKと隣接する水まわり、ウッドデッキのテラスは機能的な動線となっています。育児と仕事を両立させる奥さんの暮らしやすさにも、細やかな配慮がされています。「これはこうしたほうが良いと、藤井さんのアドバイスはいつも的確でした。迷わない家づくりができて本当に良かったです」。

マイホームが運んできた新しい暮らしの楽しみ
　新居で迎えた初めての夏。「朝、室内の空気を入れ替えたら、その爽やかさと涼しさが夜まで保たれています。そこで、住宅性能の確かさを実感しました」とFさん。さらに、真夏の暑さを寄せつけない建物は、防音効果も抜群でした。2階に設けたピアノ室には、奥さんが長年愛用しているグランドピアノが置かれています。「特別な防音対策をしているわけでもないのに、ピアノの音は微かに外に伝わる程度で、驚きました」と奥さんは言います。思う存分、好きな音楽に触れられる場所がある。その喜びが、忙しい毎日に潤いを与えてくれているそうです。
　ゆったりとした敷地に建てた新居は、屋根付きの造作カーポートや外物置も完備しましたが、庭や玄関アプローチはあえて、未造作のままです。材料の手配や施工法などを藤井社長に相談しながら、休日にゆっくりとDIYで仕上げていく計画だそうです。「室内も1年経てば、木部の色が濃くなってくると聞いています。子どもの成長と共に、住まいもどんどんわが家らしい顔に変わっていくのでしょう。家の内外に手をかけて育てる楽しみを得て、日々の暮らしも豊かになった気がします」と笑顔で話すFさんでした。

建物との調和を考えた造作のカーポート。来春は、このまわりにも緑が植えられる予定

ナラ無垢材とマツ材の素材感が際立つリビング・ダイニング。階段や大黒柱は、娘さんが怪我をしないように角を丁寧に落としてある

ペレットストーブは、暖をとるだけでなくお湯を沸かすこともできる

2階階段ホールから吹き抜け越しにリビングを見る。テレビ台は大工の造作

庭やデッキと直結しているリビングの大開口は、Fさんのお気に入り

リビングからダイニング・キッチンを見る。キッチンには、根菜類をしまうのに便利な食品庫も完備

リビングには外部の視線を遮りながら光をとり込む窓が設けられている

2階階段ホールの開口から差し込む光は、階段のスリットを通して1階を柔らかく照らす

2階ピアノ室では周囲を気にせずいつでも演奏ができる。グランドピアノはカーポート設置前に窓から搬入